パーキンソン病とは

皆さんはパーキンソン病という病気について色々と調べていると思います。今はインターネットやスマートフォンなどと手軽に調べることも可能です。
ときにはその手軽さが仇となることを知ってもらうためにも、ここではパーキンソン病について正しい知識を身に着けて、より有意義な日々を送って頂くため様々な観点から説明します。

パーキンソン病とは

パーキンソン病やその他、進行性核上性麻痺やレビー小体型認知症、多系統萎縮症といった病気を神経変性疾患と称します。その中でも最も罹患数が多いのがパーキンソン病です。
日本国内に14万人以上とされていますが、ピンとこない方は「ご近所さんに必ず居る」程度と思ってください。タワーマンションなら2000戸計算ですと必ず数人は居てもおかしくない数です。
この数からも、「なんで私だけこんな病気に〜」と絶望してもいられない数です。
どちらかといえば、「ご近所の○○さんも頑張ってるんだから〜」と奮起して頂きたいと思います。

病態は脳の一部、中脳にある黒質で産生されるドーパミンというホルモンが不足する病気です。
ドーパミンの役割は、

◎全身の筋肉の収縮・弛緩の調節
◎感情のコントロール
◎自律神経のコントロール

など日常生活や生命維持には欠かせないものばかりです。
ドーパミンと同じく体内で生成されるホルモンでインスリンがありますが、血中の糖分をコントロールし、不足すると糖尿病という病気になるのはご存知かと思います。ドーパミンの場合インスリンとは違い、中枢神経に直接作用するホルモンであり、補うのも簡単ではありません。そこが大きな違いでもあり難儀な側面なのです。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の症状というと3大症状、4大症状などと呼ばれる

①安静時振戦
②筋強剛
③無動
④姿勢反射障害

などの運動症状がありますが、
早い段階では、まず自分で気付くのは難しいです。
これらの症状は発症初期では目立たないことが多いからです。これら全てが現れるとなると、かなり進行していると言ってもいいでしょう。
あろうことか、これらを初期症状と称して記載しているサイトの多い事に驚きます。
初期に多く、受診のきっかけになるのは

①手足の痺れ
②歩行時のつまづき
③洗顔・洗髪時の違和感
④睡眠障害

などが挙げられますが、これらの症状は要素としては薄いです。
このような場合は「パーキンソン病の疑い」という扱いになることが多いです。
「パーキンソン病」と診断がおりるまでに時間がかかることも珍しくないので、焦らず医師の判断を仰ぎましょう。

パーキンソン病の進行

やはり「進行する病気」という点は一番心配されるところだと思います。
進行性疾患ですから、進行します。
進行が止まることもありません。
こんな言い方をすると「どんどん悪くなる」と捉えてしまう方も多いと思いますが、

「進行は緩やか」です。

それ故、一時的に「進行が止まった」「症状が改善した」という解釈もできますが、少なくとも病気自体は進行しています。

発症から10年は普通の暮らしができる。
しかし、10〜20年で寝たきりになる。

などとも言われています。
また、寿命に関しては平均寿命と比べ「−2年」程度という数字もありますが、健康寿命や自立生活が可能な期間ともなると大幅に短くなるに違いありません。
どのような病気も進行に個人差があるのは当然です。ポジティブな言い方をするのは簡単ですが、現実的に10年も普通の暮らしを続けるのは難しいでしょう。
なんかしら日常生活に影響はでます。
もちろん、20年近く歩行可能な方などは確認していますが、独歩可能とは言い難いです。
関連疾患でもある進行性核上性麻痺やレビー小体型認知症などは比較的進行が早いです。
それ故、対処は早ければ早いほうが良いです。

薬物療法の必要性

パーキンソン病と切っても切れないのが
「薬物療法」です。
この薬物療法は決して安易に捉えないで下さい。
パーキンソン病との付き合いにおいて一番肝心なものです。
この薬物療法こそ「専門医」の真骨頂。
この薬物療法の処方こそ「脳神経内科・神経内科医」の存在意義と言っても過言ではありません。
ここで誤った選択をすると、確実に予後の期待値は下がります。因みに医療法上、専門医でなくても何科の医師でも診断・処方はできます。

もちろん薬を飲むのも飲まないのも患者さんの自由です。それを強要する医師も居ません。ただし、患者さんの暗い将来を見過ごすわけにいきませんから、薬物療法を薦める医師がほとんどです。
もし、「薬に頼らないほうが〜」「薬は返って良くない」などというカルト的なものに興味を抱いたら手を出さない方が無難です。「減薬すれば良くなる」などと本まで出した挙げ句にクリニックを閉鎖した人など居ますので注意して下さい。
全く服薬せずに元気で居られたら、ただの嘘か誤診でしょう。そのくらいあり得ない話です。
薬物療法は不可欠です。

正しい情報と正しい知識

基本的にパーキンソン病やその関連疾患についての情報は厚生労働省のホームページや大学病院のホームページなどが信頼できます。
これらのWEBサイトは検索してすぐに出てくるわけではないので注意が必要です。
大学病院に関しては全てとは言い難いので、脳神経内科に定評のある病院に限ります。というのも執拗に東洋医学に注力しているような医療機関ですと、医学的根拠もなく「WHOでは〜」「長い歴史が〜」などと濁すことが多々ありますので気をつけましょう。
念の為に言いますが、「医療機関」ですら取捨選択を迫られるわけですから、それ以外は論外です。
WEBサイト上では常に疑うことが必要です。
出版物も同様です。国内の法律では出版物の内容を厳格に取り締まる事は不可能です。表現の自由だからです。どんな嘘を書いても罰則はありません。嘘による被害が出た場合は別です。
書籍でしたら、実際に臨床で経験を重ね、実績のある大学病院の医局に在籍されている先生、またはそれなりの功績で称号を与えられた先生の書かれたものは信頼性が高いです。

パーキンソン病の捉え方・考え方

パーキンソン病は治る病気ではありません。
治る病気であれば難病の指定はされていません。
治療薬という名称ですが、治す薬ではありません。
現在、治す薬はありません。進行を止める薬もありません。
以上の点は事実なのでしっかりと受け止めてください。
受け止めたうえで次のステップに進み、これからどうすれば良いか考えましょう。

ではリハビリテーションをすることに意味はあるのか。
とても意味があります。
ただし、合理的でなければいけません。
私の実施するリハビリテーションでは、あくまでも本人の能力を限界まで維持するのを目的としています。最大限のパフォーマンスを発揮できる状態を長く維持するには、それなりのノウハウが必要です。それは何人もの患者さんの進行を長期的(最長15年間)に毎週診てきたから言えるのであって、そのノウハウに自信が持てたので今に至るわけです。

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